ウルトラマンはなぜスペシウム光線をすぐに放たないのか
ウルトラマンは
地球を怪獣から守る宇宙人である。
そのウルトラマンのスーパー必殺技に
「スペシウム光線」というのがある。
大抵の怪獣はこの「スペシウム光線」によって爆破される。
その破壊力は凄まじい。
なのにウルトラマンはギリギリまで必殺技を封印する。
地球上では3分過ぎるとエネルギーゼロになり
ヘナヘナの弱々になるらしい。
だったらさっさと「スペシウム光線」を放って
怪獣を退治すればいい。
それでもウルトラマンはギリギリまで必殺技を封印する。
「あと30秒でエネルギーゼロになります」という
赤いカラータイマーが点滅して
最後の最後、ギリッギリで「スペシウム光線」を放つ。
怪獣は爆破されウルトラマンは空に消えてゆく。
常にこれである。
地球に、それもなぜか日本に
毎週日曜の19:00に怪獣が定期的に襲ってくるのに
ギリギリまで「スペシウム光線」を放たない。
なぜなんだ!
なぜなんだウルトラマン!!
僕はその答えを
55年の時を経て見つけた。
ウルトラマンは恐らくとても優しい。
だってM78星雲「光の国」の宇宙人であるウルトラマンが
なんのゆかりもない地球のために
毎週毎週命をかけて戦うんだぜ。
超・超良い人。
愛に溢れる人に決まってる。
怪獣だって地球で暴れる理由があるはずだ。
熊が山から街に降りてくるのと同じ。
熊に罪はない。
お腹が減っていた。
自分の星を追い出され新しい星を探していた。
嫁と喧嘩してむしゃくしゃしていた。
等々。
優しいウルトラマンはそれを知っているのだ。
ウルトラマンにとって
なんのゆかりもない宇宙怪獣が
なんのゆかりもない地球で暴れている。
全くもって部外者のウルトラマンは
なんだか地上に現れる。
とりあえず話そうぜ
そうなのです。
とっても優しいウルトラマンは
怪獣を「退治」しに来たのではなく
「説得」しに来たのです。
3分ギリギリまで組んず解れつ戦っているのは
倒そうとしてるのではなく
「ちょ、ちょ、話を聞けよ」と言ってるのです。
だって超・超良い人だし愛に溢れる人だから。
なので説得虚しく
カラータイマーも赤く点滅し始め
自分の命も危なくなってきたので
泣く泣く「スペシウム光線」を放っているのです。
爆破された怪獣を見つめるウルトラマンは
切なさでいっぱいです。
最後に空に飛び立つ時に言う「シュワッチ!」は悲しみの声
「シュワッチ!」=「悲しいです!」なのです。
だからあのシーンはいつも切なげなのです。
これこそウルトラマンが
「スペシウム光線」をすぐに放たない理由です。
35年、クリエーターとして仕事をしてきました。
時を経て僕は沢山の「武器」を身につけました。
こいつを使えば一発で解決できるぜ!
という「経験という名の必殺技」も手に入れました。
時間に余裕がないとこの「必殺技」を使って
速攻仕事を収めることもありました。
クリエィティブには答えがないから
クライアントがまぁ満足してるならこれで良し!
なんて思っていました。
でもそこには圧倒的に希薄なものがあります。
「愛」です。
仕事にも愛は必要です。
いや
仕事にこそ愛が必要です。
愛のない仕事に感動は生まれません。
組んず解れつ
右往左往したり
切磋琢磨して
答えを導き出す。
それこそが「愛のある仕事」であり
感動が生まれるのだと思うのです。
必殺技は最終兵器です。
すぐに使うのは愚策だし
できれば使わない方が良いのです。
クライアントの皆さま。
僕が制作において
何かちゃちゃっとラクして作ろうとした時
こう言ってください。
あんた、そこに愛はあるんか?
最後に
経験という名の武器で倒せる相手は
雑魚キャラです。
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